「デリス」という近所のパン屋で買ってきたまま冷蔵庫の上に二日ほど置きっぱなしになっていたフランスパンがあったので、フレンチトーストにすることにした。
砂糖と牛乳と卵しか入れていないし、抹茶アイスはだいぶ前から家にあるものだ。それで「不要不急のイチゴ」だけをオオゼキで買って作った。

それと関係があるかもしれないが、昨日は恋人の誕生日であった。私たちは、急を要するわけではないけれども、三つある部屋のうち和室だけはいまだ電気が付いていない。夜になるともっぱら私のデスクライトだけが頼りになる。母が10歳の時に父から買ってもらったものだ。それを今でも使っている。祖父は私が1歳のときに肝臓ガンで亡くなったが、何日か前、母が風呂に入っているあいだに私が泣き出したので、立って歩いていって、痩せた腕で抱き上げた。もちろんそのことを覚えているわけではないが、何度も母から聞いているので、かつての情景がありありと浮かんでくる。桜が咲きそろう前のことで、一時退院を終えてまた病院に戻るときにまばらに咲いた桜を見てかどうか知らないが、
「この子が、二十歳になるまで生きて、酒が飲みたい」
と言ったらしい。しゃがれた声で、隣にいた母にさえ聞こえていなかった。それゆえに代わりに23年後に私がこうして、ありもしなかったこととして、私が書くことになった。
先日買った電球が、スイッチを入れると激しく点滅して使い物にならなかったので、急いで吉祥寺の「ヨドバシ」に行って交換してきた。それからやはり急いで宇野邦一の『ジャン・ジュネ 身振りと内在平面』を買って、カフェですこし読んでから帰宅すると、花束とケーキがテーブルに置いてあった。壁にはお誕生日会用の、「HAPPY BIRTHDAY」と書かれた紙が紐で吊るされていた。
「かれらくんたちが吉祥寺に行っているあいだずっと走り回ってた。全然勉強できなかったのさ」
と妹が言った。
それから近所にある餃子屋で冷凍餃子を買ってきて食べた。はじめはビールを飲んでいたが、未成年の妹がカルピスソーダを飲んだので、私たちもそうした。

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