9時に起きる予定だったが12時前に目が覚めた。三月に雨が降った時に運悪く革靴を履いていた。インソールにカビが生えてしまった。代々木上原の靴の修理店に持っていった。クリーニング代 4400円。普段から土砂降りにならなければ傘は差さない。その代償が高くついた。梅ヶ丘に移動して期日前投票をした。ひさしぶりの小田急線だ。そのまま歩いて、代田にあるmame kurogouchi というブランドの小さな店舗に行った。本当に小さな店で、全部で8着くらいしか服がない。だから週ごとに品物を入れ替えるらしい。ひとつひとつが80,000円くらいするのに驚いた。自分がものを作って、それがひとつ80,000円もする人生というのは、どういうことなんだろうか。不思議だ。小野寺は洋服が好きで、おれも嫌いなわけではないが、自分が洋服を楽しんでいるときは、「プレイ」として楽しんでいるような気がする。今キーボードを打っているこの指には、水色のマニキュアが塗ってある。それは本気で美しいと思うよりもむしろ、子供が父の大きな革靴を履いたり、母の口紅を塗ったりするのに近い。

下北沢で古着を見てから、渋谷のユーロスペースでキム・ボラ『はちどり』を見た。退屈はしなかった。たとえば二つのトランポリンのショット、ラストの主人公のクローズアップは良かった。それから、塾の先生から小包が届く直前の、ひとり家で暴れているシーンもよかった。社会的な事件が物語に侵入してくる質感が良い。登場人物たちは社会的な事件として受け止めるのではなく、家族の安否や大切な人の死を、ただひとつの生死として描いていた。これは非常に重要なことだと思う。ただひとりの少女と世界との齟齬が焦点化されているところは、易きに流れなかった作者の勇気だと思う。
塾の先生も非常に魅力的な人物で、主人公に大切な言葉をさずける役割を担っているが、道徳的すぎず、かといって奔放過ぎない、絶妙で、それは俳優の演技?佇まい?によるだろう。
こうして考えていくと、いいところはたくさんあるが、どうしてかあまり刺さらなかった。なぜかはわからない。強いて言えば、ちょっと長すぎたのかもしれない。「こうして考えていくと」ということは、これを書かなかったら「微妙な映画だったな」という感想で終わっていたということだ。自分にとってどっちが良かったのかはわからない。

夜は吉祥寺のカレー屋「リトルスパイス」のブラックカレー。閉店ギリギリの時間に着いた。めちゃくちゃうまい。また行く。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です